歯ぎしりBruxism

歯ぎしりとは

歯ぎしりとは

歯ぎしりとは睡眠時、無意識のうちに強い力で上下の歯をこすり合わせている状態を言います。強い歯ぎしりですと、「ギリギリ」「ガリガリ」と音を伴います。

睡眠時の歯ぎしりは、レム睡眠(浅い眠り)時、交感神経の働きが活発になるタイミングに起こることが確認されています。また、小児で10~20%、成人では約5~8%、高齢者で2~3%と加齢とともに減少するそうです。

歯ぎしりを引き起こす原因

10人に1人、もしくは20人に1人程度の人が睡眠中の歯ぎしりに悩まされているといわれています。しかし、歯ぎしりがどのようなメカニズムで発生するのかは、現在まで正確なことはわかっていません。

正確ではないものの、いくつかの考えられる原因があります。
こちらでは、歯ぎしりを引き起こすと考えられている4つの原因について見ていきましょう。

  1. ストレス 歯ぎしりの原因としてもっとも多いとされるのが「ストレス」です。睡眠中に無意識に歯ぎしりや、食いしばりをしたりすることでストレスを解消していると考えられています。
    すべてのストレスから解放されることはできませんが、歯が摩耗したり歯茎に悪影響が出てしまったりするほどの歯ぎしりは、すぐに改善しなければなりません。
  2. 噛み合わせや骨格 上下の歯の噛み合わせが悪いと、歯ぎしりが起こりやすくなります。1本だけ歯が高くなっていて、他の歯と強く接触している場合には、歯ぎしりしやすくなります。また、歯の詰め物が原因で、歯ぎしりするようになる方も少なくありません。
    歯の詰め物の場合には、それまで歯ぎしりしていなかったのに治療後に歯ぎしりをするようになるのが特徴です。
  3. 習慣 さまざまな習慣も、歯ぎしりの原因となり得ます。たとえばスポーツ選手は、力を入れるときに瞬間的に歯を食いしばっています。それが睡眠中にも習慣となって現れ、歯ぎしりしてしまうのです。
    さらに飲酒や喫煙も歯ぎしりを引き起こす原因の可能性があります。アルコールやニコチンの摂取によって、歯ぎしりがひどくなるケースもあるのです。
  4. 子ども特有の原因 睡眠中の歯ぎしりは子どもにも起こり得ます。
    ただし子どもの場合、乳歯が抜け永久歯に生え変わる際の不快感が原因であることがほとんどです。永久歯に生え変わった後歯ぎしりがなくなれば、とくに問題視する必要はないでしょう。

歯ぎしりを改善するために
行う治療

歯ぎしりを改善するために行う治療
  1. ナイトガード 現在もっとも一般的に行われている治療法は、ナイトガードを用いた方法です。ナイトガードとは、睡眠時に用いるマウスピースで、装着して眠ることで上下の歯が直接当たらないようにすることができます。ナイトガードを付けて眠れば、もし歯ぎしりをしてしまったとしても歯の摩耗や欠損を防げます。
    またナイトガードの形状を工夫することで、歯ぎしりの回数を減らすこともできる場合があります。歯ぎしりの不快な音もしなくなるので、一緒に寝ている家族にとってもよい治療法です。
    マウスピースというと装着時の違和感が気になるところですが、慣れてしまえばほとんど違和感なく眠ることができます。加えてナイトガードのメリットは、保険適用の治療法であるということです。保険が適用されるので、治療にかかる費用も数千円から1万円ほどで行えます。
  2. 質の良い睡眠 自分で歯ぎしりの症状を改善する第一歩は、質の良い睡眠がとれる環境づくりです。寝る姿勢は横向き、うつ伏せなどで長時間同じ姿勢で寝ることはNG。枕は高くせず、寝返りが打ちやすい姿勢で眠るようにしましょう。
  3. ストレスをなくす 歯ぎしりの多くの原因がストレスによるものです。ですから、ストレス解消は歯ぎしりを治すのに非常に有効な方法といえます。
  4. 噛み合わせの調整 噛み合わせは年齢や虫歯、歯周病の進行具合などによって一生同じということはなく、一定しているものではありません。ですから、前は歯ぎしりをしていなくても、何らかのきっかけで噛み合わせが変わって、歯ぎしりが起こっていることもあります。
    もしそうであれば、歯医者さんで噛み合わせを調整してもらうことで、治る場合もあります。

歯ぎしりの種類について

  1. グラインディング グラインディング 上下の歯をギリギリと擦り合わせる習癖のことです。
  2. クレンチング クレンチング 上下の歯を強く噛み合わせる習癖のことです。食いしばり・噛み締めはこれに該当します。
  3. タッピング タッピング 上下の歯をカチカチと噛み合わせる習慣のことを言います。

歯ぎしりが与える悪影響

歯ぎしりは口や歯の健康だけでなく、全身に悪影響を及ぼす恐れがあります。では歯ぎしりがどのような不調をもたらすのか見ていきましょう。

  1. 歯に与える影響 歯ぎしりが直接影響を与える部位は、やはり歯です。
    歯ぎしりによって歯が摩耗したり、欠けたりする恐れがあります。症状がひどくなると、しみるようになったり痛みを感じたりするようになるかもしれません。
  2. 歯茎に与える影響 歯ぎしりすると、歯茎などの歯周組織にも影響が及びます。歯周炎、歯槽膿漏、歯肉炎といった症状が現れやすくなり、歯並びが悪くなってしまうこともあります。
  3. 顎に与える影響 歯ぎしりが、顎の関節に与える影響も深刻です。
    歯ぎしりによって顎関節症になる人が増えており、口が開けにくくなることもあります。それほど強い歯ぎしりでなくても、長時間続けることで顎に大きな負担がかかるので注意が必要です。
  4. その他の部位に与える影響 歯ぎしりの影響は、口や顎に留まりません。歯ぎしりは頭痛や肩こりの原因となり、さらには腕のしびれ、腰痛、倦怠感などを引き起こすことがあります。加えて睡眠時無呼吸症候群との関連も指摘されており、心筋梗塞を引き起こす遠因ともなります。歯ぎしりはできるだけ早く治療した方がよい症状なのです。

歯ぎしりのセルフチェック

歯ぎしりのセルフチェック

寝ている間に起こる歯ぎしりは、自覚しにくいのが厄介なところです。

家族などに指摘された方は間違いないと思いますが、それ以外にも、以下の項目に当てはまる方は歯ぎしりをしている疑いがあります。

  • 朝起きたとき奥歯が痛い
  • 朝起きたとき顎が痛い・疲れている
  • 慢性的な頭痛・肩こりがある
  • 歯が欠けたり割れたりしたことがある
  • 頬の内側に噛んだ跡がある
  • 集中しているとき、無意識に歯を食いしばっている

歯ぎしりの治療を受けるメリット

寝ているときに歯ぎしり・食いしばりをしているかどうかを確認できる

当院を受診される患者さんの中には、歯医者から見て歯ぎしり・食いしばりの痕跡があっても、「自分は絶対にしていません」「自分は寝るときに口を開けてしまうタイプだから」などとおっしゃる方も少なくありません。歯を見れば歯ぎしり・食いしばりをしている、もしくは過去にしていたことは一目瞭然です。

しかしご本人に自覚がない以上、「歯ぎしり・食いしばりの痕跡があります」「いや私は歯ぎしり・食いしばりをしていない」という押し問答をするわけにもいきません。

そこで第三の証人になってくれるのがナイトガードです。ナイトガードは強化プラスチックで作成されますが、歯ぎしり・食いしばりがあると少しずつ傷がつき、削れていきます。

もし本当に歯ぎしり・食いしばりをしていないのなら、傷もつきませんし、削れることもありません。逆に言えば、傷や削れた痕跡がある=歯ぎしり・食いしばりをしているという証拠になるのです。

歯医者ができるのは、病気を治すお手伝いだけ。きちんと治すには患者さん本人の協力が必須です。患者さん本人が「治さなきゃ」と思ってもらうためにも、ナイトガードは効果的なのです。

歯ぎしり・食いしばりによって歯が削れることを防止できる

歯ぎしり・食いしばりの際に歯にかかる負荷は、自分の体重の2倍〜5倍とされています。体重が40kgでも80〜200kg、70kgなら140〜350kgです。一般的に食事の際の噛む力は10kg程度とされています。その何倍〜何十倍もの力が持続的にアゴや歯にかかるので、歯ぎしり・食いしばりが続けばどうしても歯が削れていきます。

これを守るのが強化プラスチック製のナイトガードです。強化プラスチックは名前の通り強度に優れていますが、人間の歯よりも柔らかい素材です(人間の歯は鉄より硬い)。

そのため歯ぎしり・食いしばりをしても、歯そのものが削れずにナイトガードが削れるだけで済むのです。

歯ぎしり・食いしばりの力を弱めることができる

ナイトガードを装着すると、ナイトガードの厚みの分だけ噛み合わせが高くなるので、歯ぎしり・食いしばりの力を弱めることができると考えられています。この仕組みを理解するには、一度アゴの力を抜いて、だらーんと口を開けてみるとわかりやすいかと思います。この状態でのアゴの筋肉はリラックスしています。

そこから徐々にアゴを閉じていくにつれ、筋肉に力が入っていきます。最終的に歯と歯ががっちりと噛み合ったところで一番力が入ります。ここでナイトガードを歯と歯の間に差し込んでみます。すると厚みの分だけアゴが開き、リラックス状態に少しだけ近くなります。結果として歯ぎしり・食いしばりの力を弱めることができるというわけです。

実際、ナイトガードを入れたことで朝起きた時のアゴのダルさがマシになったという患者さんもいらっしゃいます。

歯医者での噛み合わせの調整を、正しく行うことができる

噛み合わせの不具合は、単に食事がしにくいというだけでなく、体全体の歪みにもつながります。ひどくなると、顎関節症、頭痛や肩こり、吐き気などにつながる可能性もあります。

噛み合わせというのは、大人になってからも変化していきます。その変化はほんの少しずつ起きるので、なかなか自覚することができません。そのため気づかない間に、噛み合わせがズレてしまっているという患者さんは少なくありません。

歯医者でナイトガードを作ると、患者さんの本来の噛み合わせになるようにナイトガードの形状を調整できます。そのためナイトガードには、噛み合わせの微妙なズレを調整し、諸々の症状を緩和する効果も期待できるのです。

歯ぎしりの治療の流れ

  1. 歯の型とり 歯の型をとり、模型を作成します。 歯の型とり
  2. スプリント作成 1~2週間にてスプリントを作成します。 スプリント作成
  3. 実際に装着 完成したものを装着していただ、調整を行います。 実際に装着
  4. 再度調整 しばらく使用して頂いたあとに、使用感・噛み合わせを確認し再度調整を行います。 再度調整