奥歯がなく噛みにくい

インプラント治療で奥歯の咀嚼機能を回復した症例

患者様の希望・主訴

治療前後の比較
治療前後の比較

40代・男性の患者様で、虫歯を長らく放置してしまっていた上、奥歯が何本も欠損しているため噛みにくいというお悩みをお持ちでした。

診断と治療計画

初診時の状態

治療前後の比較

右上4番、右下6番、左下6番が虫歯により深く侵され、残根状態となっており、保存が困難な状態でした。隣接する歯には大きな問題は見られませんでした。

また、全顎的に口腔清掃状態がやや不良であったため、まずむし歯治療、歯周基本治療、口腔衛生指導を行い、口腔内の環境を整えたうえでインプラント治療へと移行しました。

骨の状態

右下6番・左下6番は、インプラント埋入に必要な骨量が確保されており、下歯槽神経との安全距離も十分に確認できたため、埋入可能と判断しました。

一方、右上4番は頬舌的な骨幅が狭かったため、骨造成術が必要と判断しました。上顎洞との位置関係を評価したうえで、埋入可能と判断しています。

骨造成術とは

インプラントを埋入する部位の骨の幅や高さが不足している場合に、人工骨材料などを用いて骨を補い、インプラントを安定して埋入できる状態に整える処置です

なぜインプラントを選んだか

患者様は、周囲の歯への負担が少なく、ご自身の歯に近い咀嚼機能を回復できる治療を希望されました。
ブリッジ・部分義歯についても選択肢としてご説明しましたが、ブリッジは健全な隣在歯を削る必要があり将来的な歯への負担が懸念されること、部分義歯は着脱の煩わしさや異物感、咀嚼効率の低下が予想されることから、長期的な安定性とご自身の歯に近い噛み心地を重視され、残存歯をできるだけ温存できるインプラント治療を選択されました。

治療の流れ

  1. カウンセリング

    患者様のお悩みやご希望をお伺いするカウンセリングを行いました。「虫歯を治したい」「奥歯がないので噛みにくい」というお悩みを伺い、現在感じているお口の中の状態や、これまでの治療の経過についてもお話を伺いながら、今後の検査の流れや当院での治療の進め方についてあらかじめ概要をご説明したうえで、治療をスタートしました。

  2. 資料採得

    口腔内写真の撮影、パノラマX線写真の撮影、歯周基本検査を行いました。むし歯や欠損の状況、歯を支える骨のおおまかな状態、歯周組織の状態、口腔清掃状態などを幅広く確認し、これらの資料をもとに、詳しい治療計画を立案するための基礎情報として患者様にも共有しました。

  3. 治療計画の説明

    資料採得の結果をもとに、保存困難であることをご説明しました。あわせてブリッジ・部分義歯・インプラントそれぞれの特徴やメリット・デメリット、想定される治療期間や費用についてもご説明し、患者様のご希望を丁寧に伺いながら、今後の治療計画を一つひとつすり合わせてまとめていきました。

  4. 初期治療

    インプラント治療に先立ち、むし歯治療と歯周基本治療、口腔衛生指導を実施しました。歯周組織の炎症を抑えて状態を整えることで、インプラント治療へ安心して移行できるよう、口腔内全体の環境をあらためて丁寧に整備し、患者様にもセルフケアの見直しをお願いしながら次のステップに進みました。

  5. 精密検査

    CBCT撮影を行い、骨の幅・高さや下歯槽神経・上顎洞との位置関係を三次元的に詳しく確認しました。あわせて口腔内スキャンによって歯列・咬合の状態も記録し、右下6番・左下6番の埋入可否や、右上4番における骨造成の要否・インプラントを埋入できる位置と深さを、精密検査の結果をもとに慎重に検討し、手術計画の土台としました。

  6. 術前コンサルテーション

    得られたデータをもとに、インプラントを埋入する本数・位置・角度、骨造成術の要否など、具体的な手術計画をあらためて患者様にご説明しました。あわせて、手術当日の流れやお身体の状態の確認事項、術前の注意事項についても、時間をかけて丁寧にご案内し、不安の解消に努めました。

  7. インプラント埋入手術

    右下6番・左下6番にはそのままインプラントを埋入し、頬舌的な骨幅が狭かった右上4番には骨造成術を併用してインプラントを埋入しました。
    あらかじめ作製したサージカルガイドを使用することで、計画した埋入位置を正確に再現しながら手術を行い、長時間の開口が負担となる患者様の手術時間の短縮にも配慮しながら進めました。

  8. 治癒期間(2〜4ヶ月)

    インプラントと顎の骨がしっかりと結合するまで、2〜4ヶ月程度の治癒期間を設けました。この期間中はインプラントを埋入した部位の経過を定期的に確認しながら、骨との結合が十分であることを見極めたうえで、次のプロビジョナル(仮歯)装着のステップへ安心して進めるよう、時間をかけて慎重に準備を進めていきました。

  9. プロビジョナル(仮歯)装着

    最終的な上部構造を装着する前に、プロビジョナル(仮歯)を装着しました。実際に噛んでいただきながら噛み合わせや周囲の歯ぐきの状態を確認し、最終的な上部構造の形・高さや歯ぐきの状態を整えるための調整期間として、この段階をしっかりと時間をかけて活用しながら、最終的な仕上げに向けた準備を丁寧に整えていきました。

  10. 上部構造装着

    インプラントと顎の骨がしっかり結合していることを確認したうえで、ジルコニアセラミックによる最終的な上部構造を装着しました。咬合バランスや清掃のしやすさにも配慮しながら設計し、上下の噛み合わせを慎重に調整して、細部まで丁寧に確認しながら時間をかけて仕上げていきました。

  11. メンテナンスへ移行

    治療終了後は、3〜4ヶ月ごとの定期メンテナンスへ移行しました。毎回プラークコントロールの確認や咬合のチェックを行い、必要に応じてX線検査も実施しながら、インプラント周囲粘膜や残存歯の歯周状態を丁寧に管理し、インプラント周囲炎の予防と長期的な安定の維持に、これからも継続して努めます。

治療前後の比較

正面

治療前

治療前後の比較

治療後

治療前後の比較

上顎

治療前

治療前後の比較

治療後

治療前後の比較

下顎

治療前

治療前後の比較

治療後

治療前後の比較

右側

治療前

治療前後の比較

治療後

治療前後の比較

左側

治療前

治療前後の比較

治療後

治療前後の比較

レントゲン写真

治療前

治療前後の比較

治療後

治療前後の比較

総評

右上4番、右下6番、左下6番の欠損部にインプラントを埋入・補綴したことで、欠損部が回復し、天然歯に近い見た目と咀嚼機能を再獲得しました。

治療前の写真では歯ぐきの炎症や歯の変色が見られましたが、治療後は歯ぐきの状態も落ち着き、口元全体の印象も整いました。欠損によって失われていた咬合支持が回復し、左右でバランスよく噛める咬合を再建できています。

噛み合わせ・機能面についても、インプラントによって咬合支持が回復したことで咀嚼効率が向上しました。欠損部への咬合力を適切に分散できるようになったことで、残存歯への負担軽減にもつながっています。
また、対合歯の挺出や隣在歯の傾斜を抑制し、長期的な咬合の安定が期待できる状態となりました。

こだわったポイント

右上4番では頬側の骨が不足していたため、骨造成術を併用して十分な骨幅を確保し、インプラントを理想的な三次元的位置へ埋入しました。最終的な上部構造の設計でも、咬合バランスや清掃のしやすさにこだわり、長期的な安定が期待できる設計としています。

また、患者様が長時間の開口を負担に感じられることを心配されていたため、術前にCTを用いた綿密なシミュレーションを行い、サージカルガイドを使用することでインプラントの埋入位置を正確に再現するとともに、手術時間の短縮に努めました。

サージカルガイドとは
サージカルガイド

CT撮影のデータをもとに作製する、インプラントを埋入する位置・角度・深さをあらかじめ設計通りに誘導するための装置です。手術の精度向上や時間短縮につながります。

担当医師より

患者様は術前、長時間口を開け続けることや手術時の痛みに不安を抱かれていましたが、実際には想定より短時間で手術を終えることができ、術中の痛みもなく終えることができました。

治療後は「以前のようにしっかり噛めるようになり、食事が楽しくなった」「見た目も自然で、自分の歯のように違和感なく使えています」というお言葉をいただきました。複数の欠損部が改善されたことで、食事や日常生活への不安が軽減し、定期的なメンテナンスにも前向きに通院いただいています。

主訴 虫歯を治したい、奥歯がないので噛みにくい
治療期間 2年2ヶ月
治療費 176万円(インプラント埋入手術+骨造成術+アバットメント+上部構造を含む3本分)
年齢・性別 40代男性
治療のリスク 術後の腫れ・出血・痛み、感染、インプラント周囲炎、骨結合不良による脱落、神経・血管損傷の可能性 など
インプラントページを見る